流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

┗声さえ届かない

 待ちに待ち、訪れるのが恐ろしいかった瞬間がやってきた。


「テレメトリー取得しました」


 スプートニクが、テオメトリー受信地域に再び入ってきた。


「生体データ、オールゼロ」


 受信したデータを解析して読み上げるエンジニアの声は、震えていた。


「クドリャフカ………………死亡しました」


 この一時間半に、覚悟は決めていたはずなのに。


 誰かが啜り泣く声が聞こえたのをきっかけに、いくつもの鳴咽が重なりながら静かに部屋を満たしていった。

 クドリャフカが、死んだ。

 その事実がじんわりと、胸の中に染み渡る。

 けれど思考はその事実を否定するかのように凍りつき、僕は部屋の隅でただ立ち尽くしていた。

 クドリャフカが死んだ。

 それは理解出来るのに、それがいったいどういうことを意味しているのか、まったく分からなかった。
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