流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

┗おかえり、クドリャフカ。

 波が押し寄せは引き、押し寄せては引きを繰り返している。

 心地よい波の音を聞きながら、僕は砂浜に腰を下ろしていた。


『期待はしないでね、外れてるかもしれないから』


 そう前置きをしてからユリヤさんが教えてくれた、この海岸。

 偶然にも、僕の地元から列車ですぐだった。

 ユリヤさんが割り出したのは、スプートニク2号が大気圏に突入する日時と、それが見えるであろう場所。

 岩場に囲まれた、岬の見える小さな砂浜。

 夜の海は重々しい。

 満天の星空の下で向き合う海は真っ黒だ。

 打ち寄せては引く波が、手招きに見える。

 僕はランプの明かりを消して、月と星明かりだけで全てを見ていた。

 吹き抜ける風にそよぐ梢の音は、雨音によく似ている。

 闇の天蓋には、ぽっかりと夜空に穴が空いたような月と瞬く星々だけがぶら下がっていた。

 夜空のどこを見渡しても、動く星はない。

 日没から時間が経ってしまうと、スプートニク2号が太陽の光で輝くことはなかった。


「クドリャフカ、今……どこにいるの?」


 人気のない砂浜に、僕の声だけが孤独に響いた。

 砂浜に倒れ込み、仰向けになって星に手を伸ばす。

 彼女の柩は今どこに?

 早く、火葬してあげなくちゃ。

 早く、火葬してあげないと……
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