流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

「ロケットに誰を乗せるかはチェルノコフさんらが考えてるらしいけど、正確なデータを取るために二匹乗せるらしい」


 とつとつと語るトラスキンさんの言葉がどこか遠い。

 二匹乗るということは、失敗した時には二つの命が消えるかもしれないということだ。


「宇宙開発局からロケット基地に行くのは設計チームと生体研究チームだけなんだがな」


 くしゃりと、餌箱に頭を突っ込む犬の毛をなでる。

 柔らかく、温かな毛並み。

 誰が、危険な空の旅へ行くことになるかはわからない。

 けれど、誰であろうと無事に戻ってきてほしい。

 設計チームでも生体研究チームでもない僕は遠くからしか祈れないけれど、せいいっぱ祈るから。


「誰か一人世話係が欲しらしくて…………ミラン・ハイエル、おまえ行ってこい」

「ヘッ?」


 こうして僕は、まだろくに片付かない段ボールの山を崩して、ロケット基地までの旅行の準備をすることになった。
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