流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 国家機密であるが故に、ロケット開発に関わる者はそう簡単に辞めさせてはもらえないだろう。

 下っ端である僕はまだしも、設計に深く関わってしまっているユリヤさんは、どんなに辛くても辞めることは許されない。

 この先も続くであろう悲劇から、目はそらせない。

 地球を飛び立ち、宇宙へ行くという人類の夢。

 僕も憧れたことのある宇宙旅行。


 夢を見るということは、こんなにも罪なのか。


 核ミサイル、軍事衛星、国家にとって軍事利用こそが全て。

 有人飛行なんて、お遊びでしかなかった。

 あまりにも、空しい。


「僕は、君たちを誇りに思うよ」


 ぽつりと呟いた言葉は、二匹の墓石に染みる。


「そうね」


 墓石を囲むように花を並べたユリヤさんが、僕の呟きを受け入れてくれる。

 花を供えたユリヤさんは立ち上がり、簡単に言葉を交わしてから仕事に戻っていた。
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