流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

「ツガンを、ですか……?」


 その話を聞いたのは、僕が開発局に帰還してしばらく経った時だった。


「ああ。引退することになったから、スタニラフ・ベルゾニスキーさんが視察ついでに引き取りに来るらしい」

「へえ……」


 そのことを聞いた時は、なんとも言えない心地がした。

 スタニラフ・ベルゾニスキー。

 生物打ち上げプロジェクト、この宇宙開発局を監督されている方だ。

 ツガンがここを引退して、ベルゾニスキーさんの家で飼われる。

 現在、フライトから無事帰還したのはツガンだけになってしまった。

 大事な生き証人であるツガンを失うわけにはいかない。

 だからこその、引退。

 このまま実験に参加していては、命を失う可能性もある。

 例え飛行実験以外なら安全だとしても、それが最善だ。

 けれども、嫌な考えも同時に浮かんでしまった。

 そんなはずはないと、思いながらも……
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