流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 最初、アルビナがスプートニク2号に乗り込むことになりそうだと僕は聞いていた。

 けれど、既に飛行実験に二回も参加していることや、もう乳離れをしているとはいえ子犬のために母親は必要だということで外されたらしい。


「けど、それが本当に理由なのかな?」


 宇宙開発局からの帰り道、ぽつりと独り言が零れる。

 アルビナの方が、クドリャフカよりみんなに可愛がられていたように……

 涙が流れそうになり、ぐっと堪えて空を見上げる。

 別に僕は、アルビナの方がスプートニク2号に乗ればいいのにと思っているわけじゃない。

 ただ、誰にも死んで欲しくない、誰も殺したくないだけだった。


「クドリャフカ、月が綺麗だよ」


 涙に滲んだ月が煌めいて、僕はリードを軽く揺らす。


 きゅん


 クドリャフカが僕を見上げて、小さく鳴いた。
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