流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

「クドリャフカ、いいお天気だね」

 きゃん!


 無事にロケット基地に到着した僕は、クドリャフカの散歩に出かけていた。

 広い敷地内の草原を、二人で歩く。

 これが最後の散歩。


「クドリャフカ、内緒だよ」


 僕は唇に人差し指を当てて、クドリャフカのリードを首輪から外した。


「ほら、行ってこい!」


 軽く背中を押すと、クドリャフカは走り出した。


 きゃん、きゃんきゃんきゃん!


 クドリャフカは元気に草原を走り回る。

 ぴょん、と跳ねて、きゃん、と鳴く。

 とても元気な姿を僕に見せてくれた。

 こんなに元気なのに……

 いや、元気だからか。


 ぎゃんぎゃん!


 クドリャフカが僕を振り返って吠える。


「はいはい」


 と言って、僕はクドリャフカの後を追って歩き始めた。

 背の高いフェンスに囲まれた、この基地から逃げることはできない。

 出入り口には、銃を持った警備兵が立っている。

 彼女が踏み締める大地は、これが最後。

 僕は空を仰いだ。

 青い空に白い太陽と月が浮かんでいる。

 白い雲の向こうに、彼女は行く。


 ぎゃん!


 クドリャフカがまた僕を急かす。

 一人でも歩いて行けるはずなのに、クドリャフカは……
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