流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜
 彼女はスプートニク2号という柩に納められ、ロケットの先端に据えられた。

 機器のチェックが終われば、いよいよ打ち上げに入る。


「きょっ、局長!」


 夜半過ぎにまで及ぶ機器チェックに、雑務に走り回っていた僕は局長を見かけて目を見開いた。

 彼は、なぜかストーブを運んでいたのだ。


「ああ、ハイエルくん。ちょうどいい所に……」


 僕は局長にストーブを手渡される。


「今夜はとても冷えるからね。クドリャフカくんに届けてもらえるかな?」

「はっ、はい!」


 僕は息巻いて、ストーブをクドリャフカに届けに行く。

 局長が言った通り、今夜はとても冷える。


「お疲れ様です!」


 発射台にいる作業員に挨拶をして、昇降機で上がらせてもらう。

 R-7ロケットの先端にあるスプートニク2号の中に、クドリャフカはいた。
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