流れ星になったクドリャフカ〜宇宙で死んだ小犬の実話〜

┗厄介な感情は心地よくもある

 朝には準備が全て完了し、あとは打ち上げを待つばかりになった。

 はずなのだが……

 さっきから、人の行き交いが激しい。

 クドリャフカに何かあったのではないだろうか?

 そんな胸騒ぎが胸を過ぎった瞬間、廊下の角からユリヤさんが走ってきた。


「ミランくん!」


 ユリヤさんは真っ直ぐに僕に向かって来て、僕はユリヤさんなら何か知っているかもしれないと期待する。


「ユリヤさん、この騒ぎ……何かあったんですか?」


 白衣の袖に包まれた両腕をつかんで、彼女と真正面から向き合う。


「スプートニクの気密カプセルの圧力が変わっちゃって、それで……」

「それで! クドリャフカは大丈夫なんですか?」


 ユリヤさんの言葉を遮り、叫ぶ。

 下っ端職員に過ぎない僕には、それがどういったことなのか、危険性があるのかないのかさえわからなかった。
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