Winter Blossom~君の隣りで~
~プロローグ~
~蘭side~


心音が鳴り響く病室で
手を握り締める女。

私、一ノ瀬 蘭(いちのせ らん)。

一ノ瀬財閥の長女で
弟の財閥会長の
秘書役として
私はいて、後の谷山財閥の会長婦人。
今年で、20歳だ。

そして
ベッドで横たわり
眠り続ける男。

彼氏の、谷山 游輝(たにやま ゆうき)。

谷山財閥の長男で次期会長。
2年前の事件と事故のせいで
手術は成功したものの
意識だけが
2年前から覚めない。

そう
游輝は、いわゆる
植物人間だ。
お医者様も
意識が戻るかどうか分からないらしい。
もう2年たつので
そろそろ
アメリカで安楽死させよう。とか
意味の分からない話が出ている。
そんなこと
一ノ瀬財閥の力と
きっと
谷山財閥の力で
絶対にそんなこと揉み消すけど。

私は、もう見慣れた
游輝が寝てるベッドの側にきた。
そして
游輝の頬に手を当てた。

暖かくて…柔らかくて…
生きてる。
そう感じることができる。

「ねぇ?游輝。そろそろ起きたらどぅ?」

『……』

「あんたが起きないと…お医者、さまが、あんたを……っ!お願いっ!起きてよっ!」

『………』

「ゆーき?…グスッ、游輝、起きて?游輝が起きない…結婚式、挙げられない、じゃない…」

『……』

私は、涙を静かに流してた。

游輝の顔を見ながら。

すると
游輝は、涙を流した…
いつも
私が泣いたら
必ず流す。
それは
私の涙が游輝の瞼に落ちただけかもしれない。
でも、私には…

「もぅ…次期、起きるのよね…?」

そう思うしか出来なかった…。

そうしか
思えなかった。





今も、まだ
雪がまるで桜のように舞い落ちてくる…

Winter Blossom(冬の桜)










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