その衝動の果て…【完】
そして僕は、今まで考えていたあることをとうとうやることにした。

ここ数か月、綿密に計画を立てそのために時間をかけて準備した。

その日まで誰にも気が付かれていない自信はあった。

ずいぶん前にそうしたいと思ったのが…

始まりだった。

最初はためらいがあった。だからこそ長いこと実行に移すことがなかった。

あくまでもそれは妄想の中でのことだったから。でもおそらくこれで家を出たら…

二度とそんなチャンスはこないだろう。


10歳の時アイツから聞かされた

「…何したって誰の記憶にもどんな記録にも残らないから、

役目さえ果たせば好き放題していいからね」

という残酷な言葉が結局は僕の背中を押し、

罪悪感にまみれた感情を振り切った。

どんなに自分を蔑もうと罵ろうともその願望は僕の奥でくすぶっていた。

僕のせいじゃないからといって…

無くなるわけじゃない。

だからその穢い(きたない)感情に、その衝動にケリを付けたかった。


それなのに…

なんで…


今、僕の目の前にオヤジがいる…

オヤジは僕の胸ぐらを掴んで

「お前は何者なんだ!!」

そう叫んで僕を1発だけ殴った。

渾身の一撃。年寄りだと思っていたのに…

僕はその場に沈み込みしばらく動けなかった。

涙を流しながら、立ち尽くして震えるオヤジ。

その脇には静かにソファーで眠ったカノジョ。
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