その衝動の果て…【完】
僕の名は佐々木慈希(ささき いつき)

僕は4人家族の次男坊。兄、瑞希(みずき)とは6歳離れていて…

典型的な末っ子だった。

特別な力を覚醒した3歳頃から、

残酷な事実を突きつけられる10歳になるその日まで、

やりたい放題だった。

ある日突然、見える世界だけでなく、

見えない世界がすべて僕のものになったと勘違いした。

僕は神に選ばれた存在なんだと勘違いした。


他人の心や、記憶がのぞけるようになり…

他人に声を発せずに気持ちを伝えることができるようになっていた…

その他にも僕はフツウの人と違って様々な能力(ちから)が…

なぜかその日を境に備わった。


それから面白半分、興味本位に色々な人の過去や感情を垣間見た。

しかし、特別な力は良いことばかりではなく…

僕の中に複雑なものを持ち込み、混乱させた。

幼い自分には受け入れることのできない過去の事実。

でも幼い姿とはそぐわない、内在する大人びた感情や母に対して感じる衝動。


何も見えないわからなかった頃の目の前にあった普通の日常の幸せが

全て崩れ去っていくような気がして…

何を信じたらいいのかわからなくなった。


誰も信じることが…

もちろん自分すら信じられなくなった。

< 4 / 30 >

この作品をシェア

pagetop