恋はとなりに



鈴木家の朝食は7時。


コウタと並んで食べる。変な感じ。

コウタとあたしはトースト。おじさんとおばさんはご飯。


「さくらちゃん、眠れた?コウタうるさくなかった?なんかあったらすぐ言ってね。」

「よく眠れました。」


「よかった。おばさん、女の子欲しかったからさくらちゃんが来てくれてすごく嬉しいの。このまま居てくれていいのよ。」


とおばさんは言ってくれた。


そういえばベッドのシーツもカバーもピンクになってた。

コウタは会話に参加もせず、さっさと食べて出てってしまった。


「コウタっていつもあんなに無口何ですか?」


「そうよ。いつもあんなよ。つまんないわよー。さくらちゃんといるときはもっと話す?」


「そういうわけでもないですけど。意地悪なことをよく言われる印象があります。口数は少ないけど。」

あたしは思い出しながらゆっくり言った。

おじさんも出てってしまってあたしはおばさんとゆっくりしていた。


「あー、そうそう!」

おばさんは高めの声で何か思い出したように言った。

「あの子ってば、好きな子に意地悪するタイプよ。昔っからそうよ。さくらちゃんにも意地悪するってことは……気に入ってるのねぇ。」

とおばさんは嬉しそうに笑った。


あたしは笑いながら、昨日のコウタの言葉を思い出した。


ザ ン コ ク



あたしってば残酷……。


昨夜、ほんとはよく眠れなかった。


考えてたら、なんとなく残酷の意味も理解できて。

少し後悔した。


のんびり支度して出掛けた。





そうそう、先週の土曜日の河瀬君とのデートはなくなった。


あたしからお断りした。
お母さんたちの旅行の件もあって週末はいろいろと忙しかったから。

断るにはいい口実だった。


9時に家を出た。


駅のホームで電車を待っていると、目の前にコウタが現れた。


びっくりした。

「な、何でいるの?学校は?」

コウタはムスっとしてあたしを見下ろしている。


昨日のこと怒ってるのかな。それとも出てけとか。

頭の中で憶測が飛び交う。


「俺と付き合おうとしてたって言ったろ?」

コウタがやっと口を開いた。


「うん。」

なんだその事か、と内心ほっとする。

「何で気が変わったんだよ。」


コウタに聞かれ、あたしは目を逸らした。

コウタのお腹の辺りを見ながら言った。

「コウタが女の子部屋に泊めたりしたから。」

言ったら、自分で悲しくなってしまった。

気づいたらコウタの靴を見ていた。

うつむいて。


「泊めたけど、なんもしてない。」

コウタが言う。

「さくらを裏切るようなことしてないから。」


コウタはキッパリ言った。それは男らしく堂々としていてちょっとかっコよく感じた。






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