魔法のキス
あの日、あんな話にならなければ、雄馬と夜は高級寿司店にでも行こうと思っていたのに。
そして帰りに雄馬の大好きな美味しいスイーツを買って……。
ガチャガチャ
このところ、職探しに面接、それに母がくる前にと、シェアハウスまで探して大変だったので甘い物が美味しい。
ゴディバのチョコレート6つ目に手が出たときに玄関で音がした。
母が来たのだ。
トントントンと足音がして、母がリビングに入ってきた。
「朋花、もうママは倒れそうよ。ほんとに他の仕事をみつけてしまって、それにシェアハウスだなんて。でも、もう何を言っても無駄なんでしょ。シェアハウスの保証人パパに頼んできたわ。そうしないとホームレスだーなんて言い出すし」
無茶苦茶な娘だ。
自分でもそう思うが、もう止まらないのだ。
「ありがとうございました。シェアハウスはお父さんが心配しなくていいところを探したので。調査したんでしょ?私が住むシェアハウスgenuineのことは」
6つ目のチョコレートを口に入れながらそう言った。
「したわよ。それでも心配だわ。ここが一番安全なのに。何故ここじゃダメなの?」