巡り愛
決着


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僕は浮かれてると思う。


矢野から借りた車を病院の職員用駐車場に停めて、昨夜のことを思い出すように目を閉じた。


あいが僕のことを『好き』だと言ってくれた。
巡り逢ってから、僕から言ったことはあったけど、あいから言われたのは昨夜が初めてだった。


あいの口から発せられた『好き』の威力に、速攻ノックダウンだった。


今まで感じたことのない、感情が僕の心に溢れた。


嬉しいとか、幸せだとか・・・そんな簡単な言葉じゃ、言い尽くせない感情が溢れてきて、泣きそうになった。


さすがに涙は流さなかったけど、抑え込むのに必死なほど感動していた。


今まで誰に言われても、まったく反応しなかった心は、あいの一言に一瞬で変わった。
自分が好きだと思う人に、同じ気持ちを返してもらえることが、こんなにも特別な感情を生むってことを僕は初めて知った。


本当は今まで、少し、不安だった。


突然出逢って、突然“前世の記憶”とかありえないようなことを話して。
あいは僕に流されているだけかもしれないと。


僕の言動、一つ一つに照れたり嬉しそうに笑ったり。
そうする彼女を見て、彼女の気持ちを期待していたけれど。
でも本当は、僕が無理やりそうさせているのかもしれないと。


どこかで、不安だった。


だから、あいの言葉に僕は救われた気がしたんだ。


僕だけじゃなく、あいも僕のことを『好き』だと言ってくれて。
『ほかの誰にも渡したくないくらい、好き』だと言ってくれて。
『愛してる』と言ってくれた。


こんなにも幸せなことが、この世にはあるんだって、僕の27年間の人生で初めて知った。


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