蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
「ん?」

蓮杖探偵事務所のドアの前。

フラリと立ち寄った夏彦は、耕介がドアの隙間から何か覗き見しているのを見つける。

「何やってんだ、あんた」

「シッ!」

声をかける夏彦に、注意を促す耕介。

声を立てないように、そっと中を見るよう勧める。

「…っ!」

怪訝に思いつつ中を覗き、鋭く息を吸い込む夏彦。

「出かけたはいいが忘れ物に気付いて戻ってきたんだが…いやあ…つまらねぇ小僧かと思ってたら、なかなかやるぜあの少年」

顎の無精髭を撫でながら、何故か満足そうに微笑む耕介。

「そ、そうだな…冴子ちゃんの方も真面目そうに見えて、意外と…」

夏彦がゴクリと生唾を飲み込む。

何が意外と、なのだろう。

邪魔しないようにという配慮からか、それとも只の出歯亀か。

息を殺して中の様子を覗き続ける大の男二人。

そんな二人の背後から。

「!!!!!!」

突然やって来た雛罌粟がドアを開け、スタスタと中に入っていく。

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