蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
その時だった。

「だめえぇぇえぇえぇぇえぇえっ!」

人殺しとして完全に堕ちかけた耕介を引き戻す、少女の声。

…耕介達の乗るトラックに並走して、一台のバイクが近づいてきた。

乗っているのはレイノルドと雛罌粟。

「雛罌粟…」

驚いたように目を見開く耕介を。

「探偵さん…」

雛罌粟は真っ直ぐな瞳で見つめる。

「自分を捨てては駄目です…探偵さんは人殺しなんかじゃありません…」

それは、あの大雨の日に探偵事務所で耕介に告げたのと同じ言葉。

「あれは悲しい事故だったんです…誰も悪くない…探偵さんも人殺しじゃない…だから…」

風に乗って、雛罌粟の涙が零れていく。

「本当の人殺しにならないで下さい…」

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