蓮杖探偵事務所の飄々事件簿
だが、人間とはその場に存在するだけで情報を周囲に撒き散らしてしまう。

足跡、匂い、汗、血痕、銃を撃った後の薬莢に至るまで。

存在を完全に消す事の出来る人間など、この世にはいない。

省吾もまた。

「動くな!」

妙に甲高い声で背後から呼び止められる。

立ち止まり、振り向く。

「銃を捨てろ」

そこに立っていたのは少年だった。

現地の子供だろうか。

褐色の肌にクリクリとした瞳、あどけなさの残る顔立ち。

それには不似合いな銃を手にしている。

AK-47(1947年式カラシニコフ自動小銃)。

世界で最も大量に生産された小銃といわれ、非正規品を含め約一億丁ほど出回っている。

その為に『人類史上最も人を殺した兵器』とも『小さな大量破壊兵器』とも称される事がある。

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