不滅の妖怪を御存じ?
紫月



気付いた時には、凍るような冷たい目に見つめられていた。
黒く、暗い目。

藍は恐怖のせいで身体が固まって動かなかった。

先ほどまではとても綺麗だと思っていた乙姫様の目が今では恐怖しか感じない。
青白くスラリとした美しい手。

けれど、その爪が鋭くギラリと尖っていた。


殺される。

藍はぶるりと震えた。


「関係ないですよね。」


か細い声が漏れた。

まさか藍が話すとは思っていなかったのか、乙姫の手がピタリと宙で止まった。



「私、有明に気絶させられて竜宮城に連れて来られたんですよね。被害者じゃないですか。非があるのはあなたです。あなたの子供への監督不届きです。」


ペラペラと思いつくままに藍は話していた。
話の内容なんかどうでもいい。

黙っていたら殺される。
とにかく時間を稼ごう。
巻きだ巻き。
あ、ダメだ巻いたら私の寿命が縮まる。

脳内でこれ程落ち着かないのだから、乙姫へ言うことも支離滅裂だった。




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