不滅の妖怪を御存じ?






「そうだ。内容は分からぬ。だが、言語はリズムが全てだ。最後の次々と押し寄せてくるあのリズムが何よりもわたくしは好きなのだ。」


そう言って、星のない夜空を見つめる弓月の目はキラキラと何かを秘めていた。


「最後?」

「あぁ、素晴らしい終わり方だぞ。」

すっと、弓月が息を吸い込む音がした。
そして、お芝居のように高らかに空にむかって声をあげる。


「忘れな草の花を御存じ?あれは心を持たない。しかし或日、恋に悩む一人の麗人を慰めたことを御存じ?」


一気に言い切り、一息。


「蛙飛び込む水の音を御存じ?」



シーン、と。
弓月の声の後に変な静寂が残った。


「麗人って何?」


まず第一に藍がそれを聞けば弓月のため息が聞こえた。


「お主はなかなか阿呆だな。」

弓月はそう言うと、スッと消えてしまった。





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