不滅の妖怪を御存じ?

男子トイレ









鬼道学園。

妖怪から人間を守るために作られた組織。
学園といっても、その役割は教育だけでなく全国の寺や神社の統治も行う。

秘密裏に代々受け継がれてきた組織なので知っている者も限られる。
その起源は邪馬台国の時代にまで遡る、由緒ある組織。

勿論、学園に通える生徒も由緒ある家柄の子供。

中でも伊勢千秋は飛び抜けていた。
高貴な家柄に相応しい実力。
首席。

将来を期待されている伊勢千秋は、当たり前のように学園では人気者だった。
そんな才色兼備を絵に描いたような千秋に中指をたてた時点で、有田藍に対する学園の生徒たちの印象は決まった。
勿論、悪い方に。

しかしそんな周囲の雰囲気など有田藍は全く気づく様子もなかった。


「妖怪見ないでどうやって妖怪退治するんですか?」


おまけに、この言葉。
きょとんとした顔でそう言った藍に佳那子は思わず頭を抱えた。

よりにもよってそのこと……と佳那子はじんじん響く頭痛に目をつぶる。
鬼道学園創立以来ずっと悩みの種であった問題を彼女はズバッと言ってしまった。
あぁ、どう収集つけようか。


佳那子が迷っている間に伊勢千秋が最高に不機嫌な声でそれに応えた。


「人間は基本的に妖怪を退治しない。人が住む所に札を貼るか、場所そのものを清めて妖怪を寄せ付けないようにする。」


隅田佳那子は伊勢千秋とは長い付き合いだったが、あんなに怒ってるのは初めて見た。
というか、彼の恵まれた家柄と才能により、いつも人々から賞賛されご機嫌をとられていたのが伊勢千秋だ。

おおっぴらに人に怒りをぶつける機会などなかったのではないか。



兎にも角にも、有田藍は鬼道学園にいる人たちの痛いところを思いっきりついてしまったのだ。

これはもう、フォローのしようがない。




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