産後1ヶ月
私は日中に母から受けたストレスを、夜になり帰宅した夫に毎晩泣きながら吐露した。


愚痴られたストレスを愚痴って解消とは、何とも非効率な話な気もするが、吐き出さないとやってられない。


今は友達に会っておしゃべりすることも出来ないのだ。


ああ、本当に育児って孤独なんだなとしみじみ思った。


当の母親はそんな私の気も知らず、相変わらずよくしゃべっている。


ある時、大泣きする息子を抱きかかえあやしている私に向かって母が何かを叫んでいる。


息子の泣き声ではっきりとは聞き取れなかったが、どうやら今テレビに出ているスポーツ選手が、私の夫と同じ名前だということを言っているらしい。


私は正直どうでもいいと思ったので、聞こえないフリをして息子をあやし続けた。


すると母は椅子から立ち上がり、さらに大きな声を出して同じことを叫び出した。


「・・そうだね」


母は私の言葉を聞くと満足そうに着席してお茶を飲み始めた。


こんなに息子が大泣きしている中で、その泣き声に対抗してあんな大声を張り上げてまで伝えたかった情報が「テレビに出ているスポーツ選手の名前が私の夫と同じ」である。


やはり母親は根っから天然なのだ。


それに加え、年を取ったことにより昔に比べてよくしゃべるようになりよく愚痴るようになっただけのこと。


頭ではわかっていても、史上最高に情緒不安定な今、母の天然と愚痴は莫大なストレスとなり私に襲いかかったのであった。


時々どうしても我慢出来ず、「疲れてるからちょっと黙って」などと少し冷たくあしらってしまうこともあるのだが、ショボンとする母を見ると良心がチクチクと痛む。


文字通り老体にムチを打って手伝いに来てくれているのに、かわいそうなことをしてしまったなと反省し、「で、話の続きは?」と結局声を掛けてしまう。


途端に母は顔色を明るくし、続きをベラベラと嬉しそうに話し始める。


もちろん、昨日と同じ話を。


そしてまた私はため息をつく。


全くくだらない悪循環である。


こんな母とのやり取りは毎日続いた。
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