anjel








ライブハウスからバイクで走ること30分。


みっくんの地元の中央病院に着いた。


…ここに、みっくんがいるんだ。


途中のお花屋さんで買った、


オレンジ色の鮮やかな花束を潰れないように抱きしめる。


「…行くぞ」


翔の言葉に頷いて、後ろから着いて行く。


みっくんの病室は、東棟の8階。


813号室。


『コンコン』


と翔がドアをノックすると。


「どうぞー」


という、みっくんの声が聞こえてくる。


ただ、それだけなのに。


涙が溜まって行くのは私だけじゃなかった。


「入るぞ」


ドアを開けると、驚いた顔のみっくん。


…少し、痩せた?


元気、なさそう。


「っ…」


泣くな、幸望。


泣いたらダメ。


みっくんの前では、笑顔でいるんだから………


「…どうして幸望ちゃんがいるの?」


どこか、怒ったような声。


「それは……」


「私が、無理行って連れて来てもらったんです」


奏ちゃんの言葉を遮って話す。


「……私、大丈夫ですよ」


そう言って笑うと、みっくんは苦しそうに顔を歪める。


「………」


どうして…?


どうしてそんな、苦しそうな顔をするの?


「それより!瑞希〜花買ってきたぞ〜♪」


亮くんが話題を変えるように明るく話し出す。


私の腕から花束を取って、みっくんの前に突き出す。


「ジャーン♪きれいだろ〜!」


「もちろん幸望ちゃんが選んだけどな」


「…当たり前だ。亮二にそんなセンスない」


「翔ひどっ!!」


いつも通りの言い合い。


すごいな、先輩たち。


私なんて、泣かないように我慢するので精一杯なのに……










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