anjel







「あ!昨日約束してた、ケーキ持って来たんですよ♪」


私は紙袋に入れていたケーキ箱を取り出す。


「しゃー!!」


「亮二、俺のだからね(笑)」


「瑞希までいじめるの!?」


机の上で、ケーキ箱を開ける。


そこには……


「…幸望?」


「幸望りんどうした?」


「………ケーキあるの忘れて、走って来ちゃいました」


てへ、なんてらしくない笑い方をしてみる。


奏ちゃんが首を傾げながらはこの中を見ると…


「あー…。幸望ちゃんやっちゃったね」


「す、すみません……」


箱の中には、綺麗にのせたはずのフルーツが散乱しているタルト。


「せっかく作ったのに……」


ショック…


どうして私、走ったりしたのよ!


バカバカバカ〜…


落ち込む私に、優しく声を掛けるのは。


「形より、味だよ」


大好きな大きな手で私の頭を撫でるみっくん。


「…切るぞ?」


私が家から持って来たケーキ用のナイフで、丁寧に切って行く翔。


「じゃ、いただきまーす♪」


「いただきます」


ゆっくりと、タルトを口に運ぶみっくん。


どうかな……


「美味しい!」


「うま〜♪」


「幸望ちゃんお菓子作り上手だな!」


「…美味い」


「本当ですか!?よかった〜」


形はともあれ、美味しいと言ってもらえてよかった!


そうしてみんなでホールケーキを食べ尽くした。


その間も心の中で願うのは、


みっくんの心臓移植の成功。


神様、一生のお願いです。


みっくんのこと、守ってください━━━






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