海塔にて



片岡のシフトは、12時から16時だった。


自然、昼食を久城に渡すのも片岡の仕事だ。


若者に危険は任せる、といったところか。



「久城を見ておくと良い」



看守のオフィスの隣が監視部屋だった。


モニタが数個並び、白い部屋の中で微動だにしない久城を映している。


モニタの前に座っていた看守をどかせ、矢橋はキーをいくつか叩いてモニタの1つを示した。


全く動かない久城の、包帯をきっちり巻かれた手先が映っていた。



その指先は、明らかに短くなっている。



やがて画面が引いた。


壁にもたれてぺたんと座る久城が、また映った。



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