インストール・ハニー

「今日は一緒に帰ろうよ。終業式だろ?」

 明日から夏休みに突入する。終業式の朝だった。楓と登校しながら、そう言われる。

「一海と一緒だからなぁ」

「ええ~~」

 ええーじゃないよ。
 夏休みに入ってからのことを考える。健太郎も小学校が夏休みになる。夜か、健太郎が遊びに出ていてお母さんがパートの時しか家で楓を出せないな。

「あのさ、一海に紹介してもいい?」

「友達? 青葉の」

「おかしい子じゃないし。一海にだけ、ね?」

 どっちみち、一海どころかけっこうな人数の生徒に見られてるんだから、紹介するもしないも一緒でしょう。

「あなたのその容姿端麗さ、目立ってますから。黙ってるわけにいかないの。親友だし」

 ふーん、みたいな顔をしている楓。

「なんて紹介するの? 俺のこと。王子って言ったって信用しないだろう」

 すみませんが、あたしも王子だってこと忘れていますし、そう思ってないです……。

「親戚の遠い親戚を通じて知り合った友達、とか言っておこうかな。スマホから出てきたって言えるわけないし」

「遠い親戚を通じて……要するに他人だな」

「そういうこと」

 だって他になんて紹介すれば良いのさ! あたしは歩く速度が速くなった。

「あと、夏休みはあたしバイトで忙しいから。毎日遊んでられないの。宿題もあるし」

「バイト? 宿題は俺がやっておこうか」

「そんなチート高校生ダメでしょ! 王子様は宿題なんかやんなくていいの!」

 何を言い出すのか。

< 36 / 121 >

この作品をシェア

pagetop