インストール・ハニー
「強くなったな、ちょっと」

「……そうかな」

 背後から聞こえてくる声。安心する。そして不安にもなる。どっちなの? 両方だけど。

「楓のおかげかもね」

「そっか」

 肩に置かれた手が、そっと優しく顎の下に回され、背中にゆっくり体温が伝わってきた。

「ちょっと、邪魔しないって言ったじゃん。これじゃ宿題できないよ」

 照れくさい。顔を見られない状態で良かった。これが正面だったら、顔が溶けるほど熱くなっていたに違いない。

「ごめん。ちょっとだけ」

「もー」

 背中の体温が心地良い。心音が聞こえるよ。背中に伝わって、心に聞こえるよ。楓が大切だって言ってるあたしの心も、聞こえるだろうか。この体を伝わって。そうだったら、どんなに嬉しいだろうと思った。


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