君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
新庄さんの新人時代か…。

どんな感じだったんだろう。


2年目になる時に、堤さんが入ってきた、と言っていた。

ふたりの間には、やっぱり何かがあったんだろうか。



「あたし、結婚するかもしれない」

「はっ?」



あまりに突然の宣言で、頭がついていかなかった。



「しないかも、わかんない」

「すればいいじゃん、どうしたの」

「わかんない」



ギネスを飲みながら、彩が自問自答するように言う。


新庄さんの言っていたことが頭に浮かぶ。

社内に、つきあっている人がいるんだろうか。


だったら、何を迷っているんだろう。

結婚に、障害でもあるとか?



「恵利だったら、今結婚してほしいって誰かに言われたら、どうする?」

「言われてみないと、わからない」



だよねー、と彩が言う。



「めんどくさいこと言って、ごめん」

「ほんと、めんどくさいよ、どうしたの」



ちょっとさー、かまってほしくてさー、と彩があけっぴろげに言う。

元気のいい、前下がりのボブの頭をよしよしとなでると、彩は、グラスに向かって大きなため息をついた。



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