君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
面白がるような堤さんの視線に耐えきれなくて、最後のほうは、つぶやきにも似た声になった。

堤さんは、ふふっと笑うと、言うね、と煙を吐き出す。



「別に俺は、コンペの負けはたいして気にしてないよ。お前の企画は、確かに見事だったし、恥も、まあ自業自得」



それより、と、新庄さんに冷たい笑みを向けた。



「そういう、汚い手とか、全然使いませんみたいな、妙に潔癖なふりしてるのが」



気に食わないんだよね。



「久々に会ったら、なんだか大事なものまで見つけてるし」



言いながら、私の髪に手を伸ばす。

思わず肩をすくめた時、割れるかと思う勢いでテーブルを殴って、新庄さんが立ちあがった。


とめる間もなく、堤さんの襟元をつかみあげて、ガラスの壁に叩きつける。

衝撃で震えたガラスが、部屋中をびりびりと響かせた。


私は息をのむだけで、身動きもとれなかった。



「いい加減にしろ。こいつは、関係ない」

「なら、ほっとけば」



言葉に詰まった新庄さんが、憎々しげに堤さんをにらみつける。

堤さんは余裕の表情で見返すと、突然。


おかしくて仕方がないというように、吹き出した。



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