Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「いいこと、お姫様。あなたは選ばれた特別な人間なの。私の下にいることを誇りに思いなさい」

 圭斗がこの場にいたならば、先ほどのようにはっきりと言っただろうが、紗綾には真似のできないものだ。
 そして、紗綾は不意に自分がこの人のことが嫌いなのだと思った。
 単に苦手や恐いということではなく、激しい感情が胸の奥にあることを自覚してしまった。
 気付きたくなかった自分の心の闇を知ってしまった。
 紗綾は誰かを特別に好きになったことはない。誰かを特別に嫌いになったこともない。
 これほどまでに強く、嫌悪したことなど、今までにはなかったのだ。
 初めこそ、十夜を冷酷だと思ったが、それは嫌悪ではなく、今ではもうその感情も存在しない。

 魔女にはそれもわかっているのだろうか、そんなことを考えながら、彼女がそれ以上何も言わなくなったことに安堵して、紗綾は窓の向こうの景色を見た。
 今までは嵐や八千草が助けてくれていたのだと気付く。八千草は何も考えていなかったのかもしれないが、それでも嵐はできる限り遠ざけてくれていたように思う。
 十夜は助けてはくれない。彼が無口であることだけが救いなのかもしれない。彼もまた魔女を嫌っている。
 尤も、彼と魔女の間には複雑な問題があるのだから。
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