Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「君、どうしたの?」

 落ち着いた声が響く。
 ゆっくりと紗綾は振り返る。
 その声は、その時は確かに天の声にさえ聞こえたのだ。
 救世主が現れたと表現してもいいのかもしれない。
 そう感じた。

 既に運命が全く予想外の方向に進んでいること、その恐るべき引力の強さに気付くこともなく。
 後にその人が悪魔だと呼ばれ、策士などと認識するに至るとも知るはずもなく。
 ここが始まりだったと振り返ることになるとも知らずに。

 そして、一年後――
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