Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~
「で、黒羽は逃亡したかな?」
「すみません……」

 紗綾はビクッとしてから、頭を下げた。
 先ほど頼まれたことを既に放棄してしまっている後ろめたさがある。

「いいよ、放っておいて」
「でも……」

 将也は微笑んでいるが、それは彼が優しいから怒らないだけに違いないのだ。

「本人が逃げるならそれまで」
「お前も無茶苦茶だよな……けしかけたり突き放したり」

 将也の後ろで佐野が呆れている。

「黒羽十夜が『俺のことはいい』って言ったんだからいいのよ」

 マリエの言う通りなのだが、その前に将也との約束めいたものがあったわけだ。

「でも、紗綾ちゃんが嫌なら、やっぱり邪魔だったのかも……」
「い、嫌じゃないよ。本当に探してくれて嬉しかったんだよ!」

 敢えて言うならば、自分という存在のタイミングが悪かったのかもしれない。

「障害に挫ける黒羽が悪いってことだな」

 後ろで佐野が頷けば、マリエもパッと顔を明るくした。

「そうですよね、黒羽十夜が悪いんです。いつまでもガツンといかないから」
「その通り」

 将也も大きく頷く。まるでマリエまで紗綾がわからないものを理解してしまったようだった。
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