Milky Way~壁の乗り越えかた~
「安曇先生、今日はごちそうさまでした」

「喜んでもらえて嬉しいです。今度はアパートにも来て下さい」

アパートの住所を書いた紙を受けとると、松澤先生は少しうつむきがちに、義徳に話しかけた。

「鷲……か、奏さんも……」

「芸名でいいですよ」

「はい……わ、鷲尾さんもありがとうございます。サインばかりか握手まで……」

「いえ、マネージャーのいる手前、ファンサービスを怠るとこっちが怒られますから」

冗談めかして義徳は言う。
そんな顔を他人に見せないで……

わたし以外の女の人に笑いかけないで……

松澤先生と笑顔で話している義徳と、義徳を前にして頬を赤らめている松澤先生を見て、ますます胸の痛みがひどくなる。

「馬鹿馬鹿しい。わたしと義徳は……」

急にわたし達の関係が分からなくなった。

幼馴染……

いや、東京に行く前に義徳が告白してきて、わたし達は彼氏彼女の間柄になったはずだ。

でも……

わたしは義徳に「好き」って伝えていない……
< 29 / 82 >

この作品をシェア

pagetop