トワイライト
「有さん急いで出かける支度をして!」
  と大雅が有に言うと




「は・はい!」
  と返事をして有は止めどなく流れ落ちてくる涙を、ハンカチでしきりに拭いながら、急いで身支度を始めた。




  ちなみに末期がンであると治子からは最初から告げられていたから、如月との別れはそう遠くはないのだと、ある程度覚悟をしていたものの、こんなに早くその時期(とき)が来た事に、有は哀しみのあまり胸が押し潰される思いだった。




『治子おばあちゃまどうか生き伸びて!せめて治子おばあちゃまが長年抱き続けていた、孤児院が完成してそれを見届けるまで』と有は大雅が運転する車の助手席で、両方の手をしっかりと握り合わせて、ずっと祈り続けていた……。
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