最後の恋―番外編―


「ちなみに美月の予想は?」


うまくはぐらかされた気がするけど、私は素直に自分が考えた職業を挙げていく。


「最初は漫画家かと思ったんだけど、漫画家が毎年そんな風に休みとれるわけないでしょう? 次は、あの器用さでレースの教室でも開いてるのかと思ったけど、それじゃ、あまりお客さんの来ないあの店をやりくりできるわけないと思って……。だから結局は答えが出ないままなの」


結局、考えたけれど答えが出なかったことを正直に告げると、学はとうとう声を出して笑った。


「ホント、美月って可愛いよね。 誠人をクマさんとか漫画家とか!」


何がツボに入ったのか、お腹を抱えて笑い出す学。顔をくしゃくしゃにして笑う、そんな姿でさえかっこいい。さっきからすれ違う女の人たちが、頬を染めて見ているのに気付かないのかな?

茜さんはよく学のことを、“ヘタレ”と言っていて、学本人もそれを認めている。だけど、最近になって私は、学にはヘタレなだけじゃなくて、結構鈍感なところもあると分かってきた。

それでも、お姉ちゃんにコンプレックスを持つ、ありのままの私を好きなってくれた学を、ヘタレだろうが鈍感だろうが、私は好きなんだけど。

学だったら、なんでもいいのかもしれない。


改めてそう思うから、学が私のことを笑っていても、怒りの感情より先に“幸せだなぁ”って思ってしまう。


学の笑顔につられるように、私もほくほくと笑みを浮かべると、学がぴたりと笑うのをやめた。
そして私の顔を大きな掌で覆う。
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