最後の恋―番外編―

そんなアッサリと未来を約束するような言葉をくれる学に、ドキドキするやら呆れるやら複雑な感情に苛まれる。

私たちの向かいに座っている覚さんは、学の言葉を聞くなり遠慮なく声を出して笑い始めた。覚さんの笑いは納まりそうにもなくて、だんだんと学の甘い視線が鋭いものに変わっていく。そしてその視線はとてもゆっくりと覚さんの方へと向けられる。


「おっまえ、何、素で砂糖みたいに甘い台詞言ってんだよ」


ツボに入ったのか、さっきまでの大人の色気はどこに行ったのってくらい、子供みたいにお腹を抱えて笑い始めた覚さん。
学の視線をものともしないで笑い続ける覚さんに、変わらず鋭い視線を向けたまま学は言った。


「別にいいだろう? 思ったことを素直に言ったまでだ。 それに俺の最後の女は美月って決めてるから父さんもそのつもりで」


笑う覚さんに、静かな、でも意志のこもった声で宣言する学。その宣言に覚さんは、「リョーカイ」とちゃんと理解しているのか分からないほど軽い返事を返した。

そこにちょうどいいタイミングで、志保さんがティーカップを4つ乗せたお盆を持って現れて、にこにこしながらそれぞれの前へと置いて行く。

「ありがとうございます」と飲み物のお礼を言うと、「砂糖は好きなだけ使っていいわよ」と、角砂糖がたくさん入った小瓶を渡された。

香水瓶のようなそれを受け取るときの私の顔は、絶対赤くなっていた。
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