無気力女神と何様ヒーロー
 


「……もうちょっと離れてよ。暑苦しい」
「羽衣奈さんの格好の方が暑苦しいと思うの俺だけ?」
「うっさい!」

体操服の上に重ねて着た、冬用の長袖ジャージ。
その裾を引っ張ってくる宙の手を払いのけ、ついでに奪われていた帽子も取り返した。


……秋なんて、名ばかりだ。

9月も終盤に差し掛かろうというのに、外はちっとも涼しくなってくれない。
おまけにこんな日に限って厭味みたいに空は快晴。

あんまりむかつくから、日焼け対策に全身ジャージとUVカット加工されたつば帽子を身につけて。

高校最後の運動会の今日、
私は朝からずっと、スタンドで応援に徹していた。


 
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