恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~




水面の夢を見ていたような気がする。
ゆらぐ水面を眺めているのか、若しくは泳いでいたのかも。


ふわりと一瞬浮かんで、背中に感じた柔らかさに目が覚めた。


目の前に、笹倉の顔があって、その向こうに寝起きの時によく見る天井。



……寝室だ。



漸く目の焦点が合ってぼやけた視界がクリアになると、笹倉が私を見下ろしてるのがわかった。



「ごめん。起こした?」



リビングから、運んでくれたところだったらしい。
私をベッドに残して、彼は身体を起こすと軽く襟元を整えた。


そういえば、私、通勤の服のまんま。


どうなったんだっけ、と自分の姿を確認したら、いつものルームウェアに着替えさせられていた。



「…あのまんま寝かすわけにもいかなかったし」

「うん、ありがと」



部屋着の場所も知ってるくらい、ここに馴染んでいたんだなぁ。


もぞ、とベッドの中で丸くなりながらそんなことを思っていたら、不意に彼の視線がこちらへ戻ってきて、にっと唇の端を持ち上げた。



「今日で最後だし、もっかい襲おうかとも思ったんだけどな」



もう遅いし帰るわ。
そう言った彼の表情には、いつもの調子が戻っていて私は安堵する。



「ねぇ。前から言おうと思ってたんだけど」

「うん?」

「アナタ、サルですか」

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