恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「狭山さんと喧嘩してから、豊田さんこそずっと私に話しかけて、狭山さん避けてたじゃないですか。全部、私を騙してたんですね」



恵美の手を振り払って、ぎゅっと膝の上で拳を作る三輪さん。
恵美は立ち上がると、彼女を見下ろして言った。



「仲直りしてなかったのは、ほんとよ。でも、三輪さんを疑って探ってた。ごめんね。もし、三輪さんの口から嫌がらせの証拠になりそうな言葉が出たら、説得しようと思ってたから」



二人の会話で、恵美が喧嘩している間もずっと、私の為に行動してくれていたんだと知って涙が出そうになる。


そして、恵美はできればこうなる前に説得したかったんだろう。
少し、さみしそうな表情をした。


それにしても、だ。


藤井さんや笹倉も驚いている様子はまるでなく、それでは今日の捕物は最初から三輪さん狙いでやってたのか。


当の彼女は、三方囲まれてずっと俯いたまま、膝の上の拳はますます震えてた。


怖いだろうな、この状況。


一歩下がっていた私は、恵美の横にならんでしゃがんだ。下から三輪さんを覗き込むようにして。


泣いてはいないようだった。



「私、何か嫌われるようなことした?」



二人で連絡取り合ったりするわけじゃなかったけど、皆でごはん行く時は大抵いたし、私は仲間だと思っていた。
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