恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
もうでなくていいんじゃない?と絶対零度な反応の恵美を宥めて、とりあえず出てみることにした。


「…はいはい?」

『お前ら鬼か。このおっさんと二人とか、飲んでても全然楽しくないんだけど』

「ちょっと、まじで男子会やってるみたいなんだけど!」


恵美に半笑いで告げると、彼女も苦笑い。


「マンションで飲んでるの?」

『駅前の焼き鳥屋。でもおっさん酒飲んでるから帰る気ゼロ』


面倒そうな笹倉の声音の後ろから、おっさんじゃねぇとか藤井さんの声がする。


「藤井さん酔っ払ってんの?」

『いや、素面。でも家泊めるにしても二人きりとかヤダ。頼むからお前らも来て』


ヤダって。
笹倉にしては珍しく調子を崩されてるようで、なんだか可笑しい。


「来てって言ってるよ」


と、恵美に伺うけど両手で大きくバツを作っている。

やっぱり笹倉とが気不味いのだろうか?それとも藤井さんが本気でイヤなのか?
わからないけど、しょうがない。


「悪いけど、私4Pとかはちょっと経験が……っいった!」


無い、と言いかけたところで後頭部を勢いよく叩かれた。
目の前の恵美の顔が般若になっていて。


「いくらなんでも下品!」

『…お前今のは女として…』


両方からダメだしされた。


「……冗談なのに。藤井さんならタクシーで帰るんじゃない?」

『いや、その藤井さんが呼べってうるさ……いてっ』


さっきの私の後頭部と同じような音がした。

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