恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
もうすぐ上がりって時に限って客が重なって、10分ほど遅くなった。


届け先の駅は二つ隣。電車も頻繁な時刻だし、迷いさえしなければ約束の7時までには間に合うだろう。


向かいを見ると狭山はもう店には居らず、俺も急いで更衣室へ寄り、出勤時に着ていた服をショップバッグに入れて待ち合わせの出口へ急ぐ。


あ、やっぱり。


ちゃんと制服のままの彼女が其処に居た。
大きめのショップバッグ二つが足元にある。



「ごめん、遅くなった。重い方どっち?」

「こっち」



ここまで運ぶのに重かったのか、遠慮なく差し出したから少し笑えた。
覗くと中に商品が7つ。てことは、もう片方は3つと小分け用のバッグだろう。



「……今日は、助かった。仕事上がりにまで巻き込んでゴメン」



少し目をそらしながら言う。
……なんで微妙に拗ねてんだよ!


なんとなく理由がわかっているから、何も言わずに笑っていたら上目遣いで睨まれた。



「くそぅ。悔しい。私だって頑張って宥めようとしたのに。笹倉が来た途端にスムーズに……」

「俺だからってわけじゃねーよ。ネームプレート見て、ちょっとトーンダウンしただけじゃね?」



そこで漸く新しいネームに目を向けて、え?とか声を漏らして絶句する。
尚更拗ねんだろうなとか思って。


ほくそ笑んでいたら。


不意打ちでの満面笑みを頂戴した。
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