恋愛放棄~洋菓子売場の恋模様~
「お前らすら祝ってくれなかったら、副店なんてほんとめでたくもなんともねんだけど」



なんでか哀愁背負う笹倉がぼやき出す。
カナちゃんが届いた料理を真ん中に置いたり、小皿を配ったりと甲斐甲斐しく世話してくれて、私や恵美は主役を差し置いて早速料理にお箸を付け始めていた。



「瑛人先輩、ほんと大変ですよね。お疲れ様です」


三輪さんが横からビールを注いで労うのを、私達他店組は首を傾げて見ている。



「なになに?副店ってそんな大変なんですかぁ?」

「うちの店は店長より副店のが忙しいんですよ、前代から」



カナちゃんの疑問に小西君が苦笑気味に答えた。



「ねぇ、あの人何のためにいるの?シフト組むのも微調整も俺、営業報告も俺、月末決算もイベント商品の企画書も全部俺、あの人なんで生きてるの?」

「そっちの店長、そんな仕事しないんだ。それ、キツイね」



接客だけが仕事じゃない。
上の立場になればなるほど、書類関係の仕事が増えるのだが……。


笹倉の店の店長はどうやらそれを放棄したらしい。



「ぶっちゃけ、あの人は仕事しなくてあの人のハンコが仕事してるだけなんだけど。ならハンコだけ生きてればそれで良くね?」



腹立たしすぎて日本語までおかしくなっているようで。


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