君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「いちいち可愛いことすんなよ」



次の瞬間、東野さんに抱きしめられた。

まるで私の質問に答えるように力強く。


「そんなことするわけねぇだろ?つーかそれって答えとして受け取ってもいいわけ?」


そっと私を離し、ジッと見つめてくる東野さん。


夢じゃないんだってもう分かってる。


だったらちゃんと伝えるだけ。


5年以上温めてきたこの思いをー...。


「私、東野さんのことずっとずっと好きでした」


「えっ?」


「こんな歳になって何年もみっともないくらい片思いしてて...。だけど、東野さんは女嫌いで。私、ただ東野さんと釣り合う女になりたくて、仕事頑張ってきました。少しでも私の存在に気付いて欲しくて。だから今、すっごく嬉しいです」


「櫻田...」


嬉しすぎて涙が止まらないくらい。


いまだにこぼれ落ちる涙を、手で拭う。


そんな私の手を東野さんが掴み、反対の手で涙を拭ってくれた。


「...東野さん」


至近距離で東野さんに見つめられて、私の心臓は壊れてしまうんじゃないかって思うほど、ドキドキしてる。


「...俺も好きだから」


そっと囁き、ゆっくりと東野さんの顔が近付く。


えっと、落ち着け!
キス。キスだから目を閉じて。


緊張のあまりギュッと目を固く閉じると、唇に温かな感触。

温もりはすぐに離れて、そっと目を開くとまだ至近距離に東野さんのお顔。


驚きのあまり、東野さんから離れてしまった。


「フッ...。驚きすぎ」


「だっ、だって!!」


第一キスなんて何年ぶりにしたことか...。
そもそも相手が東野さんなのよ?緊張は全開よ。


離れた私の腕を引き、私の身体を引き寄せる東野さん。


私の身体はまた東野さんの胸の中へと戻っていった。




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