君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「そうだけどさぁ。別に家事をやろうって言ったわけじゃねぇし」


つまみながら、ぶつぶつと文句を言う桜子。


「...でもさ、桜子。桜子だってここを出たら、全部自分でやらなくちゃいけないんだよ?だったら、それに向けて少しは準備しておかないと!一人暮らしして、毎日翔ちゃんに家のことやってもらえなくなるんだから」



あれから三人で何度か話し合いをした。

やっぱり自立には翔ちゃんも色々と考えてたみたい。

ただ、私と桜子二人を残して出ていけないというのが、ずっと頭にあったみたいで...。

家事を教えてって言ったら、翔ちゃんは上機嫌でみっちり教えてくれた。

最初は失敗ばかりだったけど、最近はやっとまともにこなせるようになり、料理の腕も上がってきた。
翔ちゃんには大感謝だよ。

...ただ、翔ちゃんが以前から自立を考えていたって聞いた時は、少なからずショックを受けた。


「あ~あ。この際、翔太と結婚しちまおうかなぁ」


「えぇっ!?ちょっと桜子ってば何を急に言い出すのかと思えば...」


「だって一番いいと思わねぇ?私は家事が出来ないし、好きな男も出来ない。翔太も乙男っつーこと隠してるし、彼女もいねぇだろ?いいじゃん!」


「いいじゃんって...」


そんな理由で結婚するなんて、ありえないわ。


「つーかさ、菜々子時間大丈夫?」


「えっ...あぁー!やだっ!もうこんな時間じゃない!」


桜子との話に夢中になってしまい、気づかなかった。

そろそろ出掛けないと遅刻してしまう。


慌ててエプロンを外し、着替えてメイクを仕上げる。

着替えを済ませ鏡の前でチェック。


「桜子!おかしくないかな!?」


「大丈夫じゃね~ ?菜々子は可愛いから」


「こっち見てないじゃん!」


テレビに夢中で全、くこちらを見ることなく答える桜子にイライラしながらも、時間がないことを思い出す。


「えっと、これ持って...。桜子行ってくるね」


「はいよ~気を付けてな」
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