君が好き。~完璧で女嫌いなカレとの恋~
「いいえ、そんな...」


「いや、本当に。ありがとうな」


藤原係長からの意外な言葉に、つい照れてしまった。


「東野達はまだ戻らないだろうし、俺から東野に話しておくから、あがっていいよ」


「えっ...でも」


大貫さん、今日で最後だし挨拶した方がいいよね?


「奈津美ならうちの専属になったんだから、これからも何度か顔を合わす機会はあるよ。...疲れただろ?慣れない仕事やらされてさ。また明日から東野の秘書だ。忙しくなるんだから、今日は早く帰って休んだ方がいい」


「藤原係長...」


「お疲れ様!」



「...お疲れ様でした!」


藤原係長の言葉が嬉しくて、口元が緩みながらも挨拶をし、自分のデスクへと戻る。


まさかあんな風に言ってもらえるなんて思っていなかったから、嬉しい。


片付けをし、みんなに挨拶をしながら営業部を後にする。


時計を見ると、まだ定時を30分過ぎただけ。


きっと翔ちゃんはまだ仕事終わらないだろうな。

秘書課に戻り、雑務をこなし、更衣室で着替えながら翔ちゃんにメールを送る。


駅前のコーヒーショップでも行こうかな。時間潰しに。


...逃避じゃないけど、今だけは東野さんのこと考えるのはやめよう。せっかく翔ちゃんが付き合ってくれるんだから、嫌な顔したくないし!


そう思い、更衣室を後にした。


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ーーーーー


「...翔ちゃん、遅いなぁ」


メールを送ってから一時間が過ぎたが、翔ちゃんからの返事はまだない。

仕事、終わらないのかな?

ここにいることも伝えたし、そのうち来るよね...?

窓側の席で、つい何度も窓の外を見てしまう。

帰宅ラッシュな今、沢山の人達が行き来している。


そんな人達を見つめていると、何人か傘をさし始めた。


「あれ...雨?」


よく外を見ると、パラパラと小雨が降ってきた。


「最悪...。傘、会社だ」


いつも置き傘にと、ロッカーに折り畳み傘が入っていた。


どうしよう、取りに行こうかな。まだ小雨だし会社近いし、何より翔ちゃんまだ来なそうだし。


空を見ると、あまりいいとは言えない雲で、雨が止みそうな雲には見えない。


「...取りに行こう!」
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