2LDKの元!?カレ

ショッピングカートに買い物かごをのせると、私は西野くんに聞く。

「何食べたい?」
「うーん、志保子さんの得意料理が食べたいです」
「それ、答えになってないけど」

得意料理と聞かれて、思い浮かぶものは洋食ばかりだ。

ハンバーグにカレーに、オムライスにパスタ……こう上げていくと思いのほかレパートリーは少ない。

肉じゃがとかならできるけど、味にも見た目にも自信がない。どうしたら味が中までよくしみて、尚且つじゃが芋がホックリと仕上がるのかを、教えてもらえばよかった。

……――聡に。

手の込んだ和食は、聡の専売特許だったから。

「……じゃあ、オムライスがいいです。卵がとろとろのやつ」

そういわれてほっとした。

「うん、いいよ」
「でもオレ、自炊しないのでフライパンすらあるのか怪しいです」
「じゃあ、買って帰ろう。調味料も揃えないとね」
「それって、これからもウチに来て料理してくれるってことでいいんですよね?」

西野くんは、冗談っぽく笑っていったけれど、その目は笑っていなかった。

もしかしたら彼は、私の心がまだ揺れていることに、気付いているのかもしれない。

だからこうして、私の気持ちを確かめているんだ。


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