イジワル上司のヒミツ

目の前には、見覚えのある車が…


その車は、お父さんのではなかった…

剛志は車を持っていない。


茉莉の彼氏のでもなく、東京の友達の車でもない…




ドサっ…



スーパーの袋が、手から落ちる。



バタン…




「…………っ！」



車のドアが開き、中から人が出てくる。

そしてその人は、ゆっくり私を見た…




「なん…で……」


呆然として、その場から動けない私の側に、その人は近づいてきた。

そして…




カタ…


私が落としたスーパーの袋を拾う。




「…豆腐に白菜にビール・・女っけのねえ食材…」


聞き覚えのあるその声。

つい最近までは、その声をよく聞いていた……




「湊……さん…」


黒っぽいジャケットに、サングラス姿の湊さん。

最後に会った時よりも、少し痩せていた…




「湊さん…どうして……」

「…撮影が一段落したから・・家に妹いんの？」

「…………いえ」

「じゃあ、邪魔するぞ」

「えっ…」


スーパーの袋を持って、スタスタと私のアパートに向かう湊さん。




「ま、待って……」


突然の湊さんの訪問に戸惑いながらも、走って湊さんを追いかける。



「あ、ちょっと……待ってください…」


玄関の前まで来た時、バックから家の鍵を出す。

湊さんの前だからか、手が震えてなかなか鍵を出せない。




ガチャ…


やっとバックから鍵を出せて、玄関の鍵を開ける。