イジワル上司のヒミツ
湊さんが、私から目をそらして話し出す。

ボソボソとした声だったが、私にはちゃんと聞こえてた。




「友達が俺の履歴書を、最初は遊び半分でオーディションに送ったのがキッカケ…で、第一審査はすぐに通過。俺は芸能人なんて興味なかったけど…別に将来やりたいこともなかったし…とりあえずオーディションを勝ち抜くまでやり通した。そして見事合格。俺は事務所に入って、東京に上京した」


湊さんの芸能界に入るキッカケは、友達が遊び半分でやったことだったんだ…

そんなこと、初めて聞いた…


湊さんは、あんまり自分のこと話さないから…





「…最初は雑誌のモデルから始まって……最終的にたどり着いたのは、俳優業だった。まさか俺が俳優なんてものをやるなんて…思ってもなかったよ…でも、俳優業にいざ足を突っ込んでみると、なかなか面白い仕事だった…人に演技で何かを伝えるのって…すげえ難しいけど、やり甲斐があった。恥ずかしい言い方だけど、俺は俳優業に誇りを持ってる……俺に役をくれる限り、この仕事を続けていきたい。この仕事を続けられるなら、化粧の濃い気取った女優やモデルにだって、愛想をまく……」

「湊さん…」
< 271 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop