オクターブ ~縮まるキョリ~
*詞*


9月になっても、一向に秋が訪れる気配はない。
窓の外は、相変わらず強い日差しが降り注いでいた。


新学期に入り、変化がいくつか見られた。
夏休みを経て、髪を明るく染めた子。
肌真っ黒に焼けた子。
みんながそれぞれの夏休みを過ごしていたことが分かる。


そして、私の周りにも変化があった。
そのうちのひとつは、席替えがあったこと。
私は春瀬くんとも永山くんとも席が離れ、廊下側の一番後ろの席になった。
隅っこの席は、クラスの誰が何をしているのかよく見える。
教室の真ん中あたりに座る春瀬くんは、隣の席の人と話している。
窓際の席に座る永山くんは、頬杖をついて窓の外を見ている。


「ねーねー、今日帰りに買い物付き合ってくんない?」

「いーよー。アタシもちょうど新しいマスカラ買いたくてさー。」


私の隣の席では、明日歌が前の席の子と話していた。
どういう縁があったのか、私はまた明日歌とは近い席になった。


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