私、ヴァンパイアの玩具になりました

バカがうつる方がマシです


パチ、と目が覚める。

窓の外を見るとまだ少し薄暗い。

私は部屋の時計を見て時間を確かめる。

「……まだ四時ですね」

まださすがに準備するのは早いですよね…。

もう一度、寝ることにしますか…。

そう思った私はベットに身体を倒そうとした。

すると、外から微かに聞こえる綺麗な音。

耳を済まして聴いていると、心がすぅ、と軽くなるような澄んでいる音。

「………なんの音でしょうか…」

何故か、その音が凄く気になって私はベットから降りてパジャマのまま外へと出た。

「…さ、…寒いですね……」

私は腕を両手でこすり、身体を温めながら音が聞こえる方へと足を運んだ。

音が聞こえる方へと行くと、お屋敷の端っこにたどり着く。

「……ここから…聞こえるのに…?」

左右見回しても、綺麗な音が出てきいる所が見あたりません…。

「……ま、…まさか幻聴!?」

私はその場で大声で叫んでしまう。

私…、幻聴が聞こえてるんですか!?

そんな私がパニックになっている時、上からクスクスと笑い声が聞こえ、不思議に思い私は上を見上げる。

それと同時に綺麗な音がぷつりと消えた。

「………なにバカみたいな事言ってるんですか…?…あ、バカな事言ってるんですか…?」

「……あ、あれ…?日向…さん?」

上を見上げると私をニヤニヤしながら見ている日向さんがいて、ビックリした私はマヌケな声を出してしまう。

「日向ですけど、何か文句でも?」

日向さんはそう言ってムスッとする。

日向さんの機嫌を損ねてしまったと思った私は、ブンブンと頭を横に振った。

「あ、…いえ…そういう訳では…」

「…そうですか。……というか、何故、アナタはここに?まだ4時過ぎですけど?」

日向さんは私に質問する。私はえへへ、と小さく笑う。

「…その、…綺麗な音を探していたんです」

「…綺麗な音…ですか?」

私が綺麗な音、というと日向さんは少し首を傾げた。

「はい。…とても綺麗で心がすぅ、と軽くなるような音なんですけど…。…日向さんが出て来た瞬間に消えてしまって…」

「…僕のせいだと言いたいんですか?」

私の発言にまたまた日向さんの機嫌を損ねてしまって、またまたブンブンと頭を横に振る。

「…ち、違います!断じて違います!」

「そうですか。…でも、もしかしてその綺麗な音とは…これでしょうか?」

日向さんはそう言いながら、私にあるものを見せてくれる。

そのあるもの、というのは。

「……ヴァイオリン…ですか?」

月で照らされたヴァイオリンは輝かしい茶色に光っていて。

思わず見とれてしまう程に綺麗な色をしたヴァイオリンだった。

「はい、正解です。…よく分かりましたね。BC優さんにしては上出来です」

日向さんは私をバカにしたように褒めると、優しく微笑んだ。

「…お、お褒めに与り大変光栄です…」

「………別に褒めてませんけど?…勘違いしないでください」

日向さんは私に無表情で冷たく言い放つ。

「…うっ……すみません…」

日向さんの冷たい表情、言葉に私は肩を落とす。

そんな私を見て日向さんは嬉しそうに微笑んだ。

で、ですよね…。日向さんが私なんかを褒める訳ないですよね…。

珍しく日向さんに褒めて貰えて、…というか初めて褒められた気がしましたけど違ったようです…。
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